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桜の季節が巡っても
第2章 了見の夏
「あなたももう二十九なんだから妹ばっかり構ってないで、可愛いお嫁さん候補の一人や二人連れて来なさいよ、涼(りょう)」
「俺はっ。泉夏の兄で、父親代わりでもある。心配をするのは当然で…!」
「…ご飯にしましょう」
まるで聞く耳持たない息子に、毎度の事ながら絢子の頭は痛い。
流川家の女性陣に愛想をつかされ、涼も渋々泉夏の向かい側に腰を下ろした。
「…本当に麻衣ちゃんなんだろうな」
「しつこい」
「しつこい?お前いつからそんな生意気な台詞を、お兄ちゃんに吐くようになったんだ!」
「いい加減にしなさいよ、涼」
「彼氏なんて…彼氏なんてなあ、まだまだお前には早い。そんな暇があったら、勉学に励め。甘く見てると留年するぞ!」
「ちょ…!汚い、お兄ちゃん!ご飯粒飛んできたじゃない!」
泉夏は顔を顰める。
「いいか、これだけは言っておくぞ。もし、万が一…万に一つの話だが」
涼の表情が陰る。
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