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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「家の両隣りも真向いも、旦那さんが喫煙者だから問題ないだろ。ベランダでたまに吸ってるの見るし。真冬でも外で吸ってる時あるぜ。それ目にする度に泣けてくる。そこまでして吸いたいのかって話だけど」
でも、そこまでしても吸いたいんだよなあ-喫煙者同士通じるものがあるらしく、龍貴はひとり頷く。
泉夏は呆れてしまう。
「…窓はまだ分かるんだけどさ、部屋のドアも開ける必要ある?」
泉夏の疑問に、龍貴は微かに頬を上げた。
「お前が俺を信用出来るなら閉めれば」
「えっ?」
「よく少女漫画とかでない?密室に男女ふたりでいるシチュエーション。自分にはなんの下心もありませんアピールで、ドアは開けておくからさって『なんていい人!』ってその時は思わせておいて、ちゃっかりやっちゃう話」
「…生々しい事言わないで」
赤面した泉夏はドアに歩み寄り、静かに閉じた。
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