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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「鍵はかけるなよ」
龍貴のからかいに、泉夏は振り向いて叫ぶ。
「かけるわけないじゃん!当たり前!」
いくら彼を全面的に信頼してるとは言え、わざわざ施錠してまで完璧な密室を自ら作らない。
これで徐々に暖かくなるはず-窓さえ早く閉めてくれれば。
テーブルに置かれた灰皿に灰を落とし、龍貴は促した。
「座れば?」
「…ベッドの上に、座わらせてもらっていい?」
「後は冷たいフローリングの上の二択だからな」
龍貴は喉を鳴らした。
「…龍の部屋は昔から変わらないね。全然物がない」
部屋を眺める。
ベッドとテーブル、テレビに本棚-シンプル過ぎる。
余計な物は一切置かれていない。
それ以外の物は、全てクローゼットに収めているようだった。
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