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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「だからなんでもないって…言葉の綾?」
「お前さあ。俺と二十年も付き合ってきて、まだ誤魔化せるとか思ってんじゃないよね?」
「…うるさい」
一応十歳も年上だし。
何より百倍くらいにして返されるから、滅多にそんな口の効き方はしないのだけど。
つい口走ってしまってから、それこそ激しく後悔する。
自分で自分の首を余計に絞める事、言ってしまった。
あんなに小さくて可愛かった泉夏ちゃんが、随分生意気な口を叩くようになったじゃん-流石にちょっとは怒られるかなと身構えていたのに、そんな事は一切なかった。
寧ろ何故か感嘆される。
普通の人と少し違う感性の持ち主で良かった-この時ばかりは彼に感謝する。
龍貴は泉夏の隣りに、腰を下ろした。
伊東君に、まさかそんな勇気があるとは思わなかったけど-前置きし。
「遂にホテルにでも連れ込まれた?」
泉夏の耳朶に向け、龍貴は囁いた。
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