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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
さっきまで吸ってたセブンスターと、プールオムの密やかな香り。
龍貴と言えばこの二つが混じり合った-最早、嗅ぎ慣れた匂い。
いつもはだいたいなんとも思わないけれど、今はちょうど間が悪かった。
彼自身が放った泉夏には少々きわどい言葉と、嗅覚を刺激する香りが絡み合い、泉夏は頬をいつにも増して染める羽目になった。
「龍じゃないんだから、そんな事するわけないじゃん」
速攻全力で否定する。
年上だしとかさっきは頭の片隅にあったけれど、そんなものは一瞬で吹き飛んだ。
「え、じゃあ何?他に何があんの?」
それ以外はないだろう的な言い方。
正直喋るつもりはなかったけれど-どうでも良くなってきた。
自分にとっては重大な事件だったけれど、この目の前の彼にとっては取るに足りない-それが改めて分かった。
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