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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「…キス」
「え?」
「キス…された」
泉夏の勇気を出した告白に、龍貴は一瞬呆気にとられ。
そして、深い溜め息を漏らした。
勿体ぶっておいて、そんな事-流石に口にはしなかったが。
「…今、なんだそんな事って顔した」
泉夏に鋭く指摘され、龍貴は苦笑するしかなかった。
「ごめん」
普段あまり誰に対しても謝罪をする事が殆どない龍貴だが、今回は素直に口をついて出た。
でもさ-言い訳でもないが、後を続ける。
「思えば電話もかけた事のない純情少年が、デートに誘うようになっただけでも凄い進歩だよな。それで今日は意を決してキスまで漕ぎつけた…伊藤君もやれば出来る男だったんじゃん」
-ちょっと見直したな。
ひとり納得して、頷いている。
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