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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「…誰のせいだと思ってるのよ」
泉夏の絞り出すような声に、龍貴は訝し気に目を細めた。
射るような彼女の瞳に見つめられ、龍貴は珍しくたじろぐ。
「え、なに」
-俺?
返答する代わりに、泉夏は小さく息を吐(つ)く。
「なにかってと、お兄さんとどうした。お兄さんがこうした。何してた。何言ってた-」
「え、まさか伊東君、俺の事が好きだったの?」
困惑の表情を浮かべる龍貴に、泉夏は萎えてしまう。
「…そうじゃないでしょ」
「え、じゃあ何。なんでそんなに俺の話題が出るの」
「お兄さんに張り合ってるんじゃないの」
-知らないけど。
顔を逸らし、泉夏は呟く。
あんまり全てを自分で喋り、自惚れ過ぎてると思われたくはない。
「俺がお前をどうかしないか心配で、探りを入れてるって事?」
敏しい彼はすぐに理解し、意地の悪い笑みを泉夏に送った。
「…なのかな?」
「俺と伊東君は好敵手(ライバル)なんだ」
恋の-泉夏の耳を、龍貴の囁きがくすぐった。
泉夏の絞り出すような声に、龍貴は訝し気に目を細めた。
射るような彼女の瞳に見つめられ、龍貴は珍しくたじろぐ。
「え、なに」
-俺?
返答する代わりに、泉夏は小さく息を吐(つ)く。
「なにかってと、お兄さんとどうした。お兄さんがこうした。何してた。何言ってた-」
「え、まさか伊東君、俺の事が好きだったの?」
困惑の表情を浮かべる龍貴に、泉夏は萎えてしまう。
「…そうじゃないでしょ」
「え、じゃあ何。なんでそんなに俺の話題が出るの」
「お兄さんに張り合ってるんじゃないの」
-知らないけど。
顔を逸らし、泉夏は呟く。
あんまり全てを自分で喋り、自惚れ過ぎてると思われたくはない。
「俺がお前をどうかしないか心配で、探りを入れてるって事?」
敏しい彼はすぐに理解し、意地の悪い笑みを泉夏に送った。
「…なのかな?」
「俺と伊東君は好敵手(ライバル)なんだ」
恋の-泉夏の耳を、龍貴の囁きがくすぐった。

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