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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「龍が余計な事言ったり、したりするから。伊東君が勘違いして、色々してくるんだってばっ」
遠慮なく密着してくる龍貴をかわし、泉夏は喚く。
「秋ぐらいからなんか急に積極的って言うか…とにかく前までとは明らかに変わった。電話だってかけてくるようになったし…手だって繋ぐようになったし。ふたりで出かけるようにもなった。彼の事は嫌いじゃなかったけど、私まだ先生の事を完全に忘れているわけじゃなくて。でもどんどん迫って来るから、気持ちがついていかなくなって。必要以上には踏み込まないで欲しいってお願いして、彼も分かったって言ってくれてたのに。最近は普通に楽しく、遊びに行ってたのに」
-手を繋ぐどころか、今日はキスされた。
完全に想定外だった。
映画館の中。
エンドロールが終わる頃。
される直前、一瞬の間(ま)があった。
彼もきっといきなり、なんの許しもなく、このまましていいのか迷いがあったのだと思う。
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