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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
なら。
しなきゃ良かった?
だって普通キスって、大切な誰かとするもの。
そう思ったら、なんか急に後悔が襲ってきた。
大事なキスを、賭の対象にしてしまったなんて。
なんで私、あの時、こんな事を-。
「伊東君って、俺をいまいち見くびってるよね?」
突如。
龍貴の声が届き、泉夏は我に返った。
有栖川先生の次だと思われたりさあ-不満げに呟く。
愛したひとの名前を口に出され、泉夏の鼓動はスピードが増す。
「俺と張り合おうなんて、百億年早いと思わない?」
妖しさ漂う微笑みを泉夏に寄せ、龍貴は同意を求めてきた。
「…確かに伊東君は、龍には敵わないと思うけど」
せめて百万年くらいにしといてあげたら-言おうとし、言葉を失う。
今の今まで左横にいた龍貴を、気づけば見上げていた。
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