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桜の季節が巡っても
第2章 了見の夏
「…暑い」
午前中から燦々(さんさん)と降り注ぐ真夏の太陽に、泉夏は毒づいた。
食後も兄に散々怒鳴られ、それでなくとも気分が盛り下がっているのに。
-彼氏なんて、いる訳ないじゃないの。
絶賛片想い中だっつーの!-夏の暑さにふらふらになりつつ、歩みを速める。
その時。
背後から、クラクションが二回。
左側通行してた事を思い出し-泉夏は申し訳なさも手伝い、なるべく左に身体を避けた。
再び、クラクションが二回。
泉夏はいらいらして立ち止まる。
こんなに端に寄っているのだから、これ以上どうしようも出来ない。
なのに、こんなに何度も鳴らしてきて-勘弁してよ。
他人を睨み付ける事なんて、滅多にないけれども。
如何せん、今の彼女は色々と気が立っていた。
勢いをつけて振り返る。
胸元まで伸ばした黒髪が、風に舞った。
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