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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
私はあなたが未だに、恋しい。
でも、あなたは?
哀しいけれど、あなたが私を求める理由が見当たらない。
なんの為にそんな事をする必要が?
そう思うとあなたの前には-行けない。
行きたいけれど、行けない。
行けたらどんなにかいいだろうけれど、私は行けない-。
「…人違いです。私は、あなたが思ってるひとじゃない」
切ない心とは裏腹の言葉が、口をつく。
「だから来ないで。私もそっちには行かない」
泉夏の拒絶に、秀王は微かに眉を寄せた。
背後に控える彼女の方向に、顔を向ける。
幹が邪魔して姿は殆ど見えなかったけれど-視線を下にずらせば、彼女の右手が見えた。
「…その指先も、もの凄く見覚えがあるのだけれど」
言われ、慌てて泉夏は手を引っ込める。
いつの間にか後ろ手に、幹に触れてしまっていた。
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