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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
「自分にとっては大切な用事が一つあって、昨日日本に戻って来た」
返事は、当然のようにない-秀王は淋しげに小さく笑い、そして遠慮がちに言葉を足した。
-いや、二つかな。
その大切な事がなんなのか泉夏は気にはなったけど-訊く事は出来なかった。
何より、最も知りたいのは。
「…また、行っちゃうんだよね」
訊くまでもない事-でも万に一つの希望に賭け、泉夏は勇気を振り絞った。
「…明後日には、帰らないといけない」
暫しの間(ま)を経て。
予想通りの答えが返ってきた。
泉夏の胸が瞬く間に、重々しいもので塞がれる。
彼女の心は-決まった。
どうせまたいなくなってしまうあなたの顔は-もう、見ない。
二度と耳にする事はないと思っていた、懐かしいあなたの声。
それを聞けただけで十分。
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