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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
地面に落ちたままだったスマートフォンと財布を拾う。
手で払い、汚れを落とす。
泉夏の動きを感じた秀王は、もう一度だけ静かに言った。
「どうしても…無理?出来るなら少しでいいから、話をしたかった」
話?
またいなくなっちゃうのに話だなんて。
泉夏は双眸を閉じ、後ろの彼にきっぱりと告げた。
「私はもうなんの話もない」
「…分かった」
これ以上ない拒絶を受け、秀王は頷くしかなかった。
こんなに近くにいるのに。
こんなに側にいるのに。
どうしてただ見つめ合う事も出来ないの。
どうしてその指先を僅かに触れ合う事さえも許されないの。
どうして。
どうして?
ねえ、どうして-?
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