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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
きっと、来ないと思ってた-秀王は囁いた。
「きっと来てはくれないと思ってた。思いながら…待っていた」
図書館での私語は禁じられている。
けれど閉館間近の館内で、周りにはもう利用者の姿もなかった。
今だけ許される、ふたりだけの密やかな会話。
「それだけ酷い事をしてきた。多分許してはもらえないのも分かっている。無理を承知で勝手に待っていた。…だから、まさか来てくれるなんて」
-そんな事があるなんて。
呟き。
秀王は彼女を見た。
そのどこまでも深く。
そのどこまでも優しい、眼差し。
その瞳に、吸い込まれてしまいそう-。
きっと今日、一生分の運を使い果たしたかもしれない-秀王は机上の本を閉じる。
「きっと来てはくれないと思ってた。思いながら…待っていた」
図書館での私語は禁じられている。
けれど閉館間近の館内で、周りにはもう利用者の姿もなかった。
今だけ許される、ふたりだけの密やかな会話。
「それだけ酷い事をしてきた。多分許してはもらえないのも分かっている。無理を承知で勝手に待っていた。…だから、まさか来てくれるなんて」
-そんな事があるなんて。
呟き。
秀王は彼女を見た。
そのどこまでも深く。
そのどこまでも優しい、眼差し。
その瞳に、吸い込まれてしまいそう-。
きっと今日、一生分の運を使い果たしたかもしれない-秀王は机上の本を閉じる。

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