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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
図書館を出れば、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
駅までの道のりをふたり、肩を並べて歩く。
初めての経験。
こうしてあなたと対等に、あなたの隣りを、まさか歩く日が来るだなんて。
自分を車道側に、私をさり気に内側に歩かせてくれるその優しさに。
いちいち嬉しくて、涙が出そうになる。
昨日あなたは話があると言った。
何かを話し始めるのかと、さっきからずっと待っているけれども-その気配は一向にない。
図書館から駅までは徒歩で約十五分。
僅かの長さではないけれど、それでも何かをするには全然足りない。
そんな短さなのにただ黙ったまま歩を進めたら、何を喋る間もなく駅に着いてしまう。
そこでお別れなのに。
またあなたは遠くに行ってしまうのに。
今度こそ偶然なんて-きっと、もうない。
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