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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
寒くないわけはない-桜の花が咲き誇る季節とはいえ、夜はまだまだ冷える。
自分でさえ、可能ならそろそろ建物の中へ入りたいと思っているのに-彼女なら、尚更。
その細い身体で。
その服装-脚が結構露出している、短いスカートのままで。
その事実を指摘したら、またいつかのように睨まれそうだけど。
でも本当に、彼女がいい加減風邪でもひかないかと心配で。
本当に彼女の事を想うのなら、駅の中へと、促すべきなのだろう。
それをさっきからずっと、出来ないでいる自分がいる。
彼女が改札を通ってしまえば-多分二度と、逢う事はないだろうと知っているから。
駅に着いてすぐに送り出そうとしたのだけれど、彼女の様子がなんだかおかしくて。
その場に立ち止まったまま俯き、口を閉ざしてしまった。
それからもうどのくらいの時間が経ったのか。
理由を訊いて、きっと優しく諭してやればいいのだろうけれど。
それを出来ない-したくない自分がいる。
別れの瞬間を、伸ばしたがってる自分が。
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