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桜の季節が巡っても
第2章 了見の夏
「…勇気あるよね。最初からその格好で行ってたんでしょ」
「じいちゃんが作って親父が苦労してでかくした会社に、無試験で入社した俺には関係ないからなあ。当然文句なんか誰も言えないし?心の中では『なんだあの馬鹿息子は』って嗤われてたと思うけど…あ、これは今もか」
自分で突っ込み、豪快に笑う。
「そして即社長だからなあ。なんの努力もしてないのに、俺の人生順風満帆だな。思えば大学だって受験勉強も殆どしなかったのに、一発現役合格したしな。こんなにも苦労せず、楽してばかりでいんだろうか。人生舐めてる感が半端ないよな」
右にハンドルを切る龍貴の手首のしなやかさ、横顔に、泉夏は思わず少し見惚れてしまう。
なんだかんだ言って、龍貴は昔から色んな意味で格好良かった。
五軒右隣りの兄の幼馴染み。
最初は涼の遊び友達だった。
それが家にも来るようになって、泉夏とも知り合いになり。
もの凄く大きな企業の社長さんがお父さんなのに、それをちっともひけらかすこともなく。
それどころか、酒も煙草も高校生から早々と覚え、品行方正とも言い難かった。
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