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桜の季節が巡っても
第10章 追憶の春
いつもの如く自信満々に出来ると言われるとばかり思ってたので-泉夏は驚きを隠せない。
だって有栖川先生、俺の次にいい男だったからさあ-龍貴は屈託なく笑う。
「そうなってくると、忘れさせようにもなかなか手強いじゃん?一筋縄ではいかない。そもそも忘れられるなら、お前だってとっくに忘れてる頃だろ?それがまだって事は、やっぱそういう事だよ。いい男程、忘れられない」
「…」
「伊東君と付き合うのもだめなら、あとは時間が過ぎるのを待つしかないんじゃない?」
-お前も忘れなきゃいけない事が色々あって大変ね。
揶揄される。
だけどくやしいけどその通りで-唇を噛むしかない。
なんだかすっかり疲れ果ててしまい、背後のドアに身体を預けようと体重をかけようとし-思いの外距離があった為、バランスを崩してしまう。
危うく背中を激しくドアに打ちつけるところ、龍貴に支えられ救われる。
「…ごめん。ありがと」
安堵の息を吐(つ)き、初めて、気づく。
ふたりの顔と顔がかなり、近かった事に。
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