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桜の季節が巡っても
第11章 逡巡の春
「ごめん。送ってくれてありがと…」
また何かをされるのかと、一瞬でも誤解した自分が急に恥ずかしくなる。
素直にお礼を言い、家の中に入ろうとしたところ、
「有栖川先生、なんだって?」
腕を掴んだ手はそのままに、龍貴は訊いてくる。
「先生に何か言われた?」
「…何かって?」
「好きだとかなんとか?」
龍貴の一言に鼓動が速まる。
後が続かない。
目が泳いでしまう。
泉夏のその様子を、龍貴は肯定の証拠とする。
口元を歪め、一気に彼女に顔を近づけた。
「今日来て欲しいだなんてわざわざ呼び出すのは、話がある以外ないと思った」
彼から遠ざかりたいのに-不可能だった。
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