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桜の季節が巡っても
第11章 逡巡の春
腕を取られてる。
そんなに強くではない。
でも、力では敵わない。
それはあの日に十分、思い知らされている-。
この危うい状態から逃れたい一心で、彼の気に障らぬよう、なるべく淡々と語り始める。
「…確かに、先生は誰かに逢いたかったと言っていた。でもそれが私の事かは分からない。名前は言わなかった。勿論私の事だとも。だから本当に…知らない」
-私が、知りたいくらい。
本音が零れる。
「また来るとも言ってなかった。ましてや、待ってて欲しいとも。私も聞かなかったし」
-だから本当に、知らないの。
目の前の彼を、縋るように見る。
そうなんだ?-泉夏の話を全て信じたのか、はたまた信じてないのか、龍貴はどちらともとれる微妙な返答をする。
「まあ、有栖川先生が何を言おうが別にいいんだけど-」
龍貴は言い、泉夏から手を離した。
そんなに強くではない。
でも、力では敵わない。
それはあの日に十分、思い知らされている-。
この危うい状態から逃れたい一心で、彼の気に障らぬよう、なるべく淡々と語り始める。
「…確かに、先生は誰かに逢いたかったと言っていた。でもそれが私の事かは分からない。名前は言わなかった。勿論私の事だとも。だから本当に…知らない」
-私が、知りたいくらい。
本音が零れる。
「また来るとも言ってなかった。ましてや、待ってて欲しいとも。私も聞かなかったし」
-だから本当に、知らないの。
目の前の彼を、縋るように見る。
そうなんだ?-泉夏の話を全て信じたのか、はたまた信じてないのか、龍貴はどちらともとれる微妙な返答をする。
「まあ、有栖川先生が何を言おうが別にいいんだけど-」
龍貴は言い、泉夏から手を離した。

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