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桜の季節が巡っても
第11章 逡巡の春
「…最近会ってないし。ラインも電話もこないから全然知らない。まあ、いつもの調子で問題なく、滅茶苦茶元気でしょうよ」
『全然』と『滅茶苦茶』の部分を特に強調して、泉夏は言い捨てる。
明らかに不快感を示している泉夏に、麻衣は眉を顰める。
「喧嘩でもしたの?」
「してないし」
即答する。
なんかあったのね-それもかなり良くない事が。
麻衣はそれを素早く察知し、もうこの話題に触れまいとする。
素知らぬ顔で売店で購入したパンを齧る。
一方の泉夏は、ここ最近考えまいとしていた黒い感情が瞬く間に甦ってしまう。
いらいらが再開する。
麻衣には当然の事ながら何も話してない-話せる内容じゃないし。
あのひとはね。
あのひとはね…!
箸を持つ手に自然、力が籠る。
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