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桜の季節が巡っても
第11章 逡巡の春
彼の話している通りだとするなら、電話したところでなんて言ったらいいか分からないし、したいなんて思えなくても仕方がない。
確かに自分は彼の気持ちは知らなかったけど-でも、責めてしまって悪い事をしてしまった。
「自分、龍にちょっと済まない事しちゃったかな?なんて、思っちゃってたりする?」
龍貴に目敏く指摘され、泉夏は正直に頷く。
「じゃ、今日しちゃった分も許してよ。俺のせいでふたりがどうかなったらやだし」
薄く笑い、龍貴は泉夏に向かって言った。
「でもしたのは、からかってるわけでも、遊びでしてるわけでもない。ましてや、ふたりの仲を壊そうなんて。ただ、好きだから。それ以外にない。俺の気持ちを知ったからって、別に受け入れて欲しいなんて思ってないし、思わなくていいけど。それだけは分かってくれたら嬉しい」
「…そんなの、知ってる」
泉夏は即答した。
彼がどんなひとなのかなんて-私は、よく知っている。
彼がそんな事を絶対にするひとじゃないのも。
彼がどんなにいいひとなのかも。
私はちゃんと、知ってる-。
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