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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
でも。
逢える保証なんてどこにもないまま、それでも一日中待ち続けるひとを、私はたったひとりだけ知っている-。
引っ込んでいた涙がまた零れそうになる。
「例えお前が行けないと言ったって。例え時間が過ぎていたって。真面目な有栖川先生ならいそうじゃん。ずっと待ってそうじゃん」
-送ってやるから、行って来い。
コンビニの駐車場から車を出そうとする龍貴の手を、泉夏は止めた。
「…私、行かない」
「泉夏」
「私、龍といる。龍がいい」
悲痛な表情で泉夏は彼の腕を掴んだ。
またどうせ苦しむのが最初から分かっているのに。
逢いたい気持ちだけではもう、行かない。
この恋とはさよならするつもりで、決めたのだ。
だから、あのひとのところには行かせないで。
ここにずっといさせて。
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