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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
龍貴は苦笑いを浮かべ、吸っていた煙草の火を灰皿で消した。
そして泉夏の手を、自分の腕から優しく離した。
「本気で言ってんの、それ」
「本気に決まってる」
「俺にはまだ先生に未練がありそうな顔に見えるけど」
「未練がないと言ったら、好きじゃないと言ったら、嘘になる。だけど私はもう本当に、これで終わりにしたいの。だから-」
じゃあさ-泉夏を遮り。
龍貴は泉夏の手を強く、握り締めた。
「さよならして来てよ」
泉夏に顔を寄せ、龍貴は短く言い放った。
「逢わずにさよならじゃなく。逢ってはっきり、有栖川先生に言って来てよ。もう本当にこれきりだって。もう二度と連絡してこないで欲しいって」
いつもの彼からは想像出来ない冷淡な笑みに、泉夏は一瞬怯える。
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