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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
「龍貴に、感謝しないといけないな」
秀王は微かに口元を緩めた。
逢えずに帰るところだったのだから-真っ直ぐに見つめられ、泉夏は居たたまれなくなる。
なんて言ったいいのか-まるで思い付かない。
謝ればいいのか。
謝らずにいればいいのか。
定まらぬ視線の先を、履いていたスニーカーに落とす。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、秀王の声が頭上に降る。
「…珍しい」
「え…?」
思わず、顔を上げてしまった。
目線が合うとそれは嬉しそうに、彼は笑った。
いつ、どんな時も。
その瞳に射抜かれると、即座に身動きがとれなくなる。
それはさようならを言おうとしている、今日だって。
なんら、ちっとも変わらない。
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