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第12章 希求の春

彼の言葉に、泉夏は震える唇を噛み締めた。
どう？
どうって？
そんな事、どうして私に訊くの。
そんな事、訊かなくても分かるくせに。
三年前のあの日から、私の心はずっとあなたに奪われたままなのに。
信じられないけれど、その想いに確かにあなたは応えてくれて。
ようやく、やっと、報われたのに。
私を好きだと言ってくれた。
私を好き過ぎるとまで言ってくれた－あなたの腕の中で。
あなたに抱き締められる日が、まさか来るだなんて。
指先が僅かに触れただけじゃない。
手首を握られたんじゃない。
あなたの両手が私の身体に触れ。
あなたの両腕が私の身体を包み込んでいる。
あなたの匂いがすぐ鼻先で。
あなたの息遣いが耳朶に。