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第12章 希求の春

まるで恋人同士のように、優しく抱いてくれている。
錯覚してしまいそう。
本当に信じられない。
それ以外に言いようがないのに。
「…嬉しいに決まってる」
そう？－泉夏が漏らした呟きに、秀王は微かに笑ったようだった。
その声音は、ほんの少しの哀しさを孕んでいた。
もう十分だと言う思いと。
もう一度訊き直したい－相対する思い。
迷っていると、自分を呼ぶ彼女の声が届いた。
「先生。そろそろ、腕を…」
－離して欲しい。
自分に触れられたままは－やはり、迷惑なだけだったのか。
明らかに困ってる泉夏の様子に、秀王は動揺を隠せない。