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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
「…小学生の、注目の的だから」
-だから、離して欲しい。
もっとこうしていて欲しかった。
だから気付いても、最初は知らない振りをしていた。
けれど段々と羞恥を覚え-遂に気持ちとは裏腹な事を懇願したのだ。
自分を否定されていたわけではなかった-秀王は、情けないほど安堵する。
「気付いてた?」
秀王が笑いながら問えば、泉夏は頬を染めて頷く。
「…さっきから、ずっと」
公園を走り回って遊んでた小学生らしいグループが、先程からこちらを指差して笑っていた。
彼らくらいの年齢が一番、こういうのを冷やかしたがる。
彼女を少しでも長く独り占めしていられるのなら、そんなのは自分にとって取るに足らない事だったけれど。
そう言われては-離すしかなかった。
多分、最初で最後の抱擁-この上なく名残惜しかったが、仕方がない。
最後の最後で、彼女をこの腕に抱き締める事が出来て良かったと、思い直せばいいのか-きっと、そうだ。
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