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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
決めるのは俺じゃない-龍貴は、泉夏を見下ろした。
彼の視線を受けて、泉夏は顔を歪めた。
「有栖川先生が、お前がいいって。他のものは何もいらないから、お前だけに側にいて欲しいって」
どうする?-龍貴の穏やかな目が、問うた。
「…ごめんね」
震える唇で泉夏は謝った。
「だからなんで謝るかな。俺、なんかすっごいかわいそうな人みたいじゃん。そうなの?」
「違う。龍はかわいそうなんかじゃない。いつでもなんでも一番のひとだから。一番に格好いいひとだから。かわいそうなんて言葉から、一番程遠いひとだから」
「だろ?」
龍貴は笑い、泉夏の繋いだ手を引いて、再びドアの前まで連れて来た。
そして絡めた指を、外した-。
背中を優しく押して、部屋の中へ入れてやる。
「…ありがと、龍」
振り返ることなく、泉夏は呟く。
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