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桜の季節が巡っても
第1章 心恋の春
満開だった桜の花。
しかし昨夜の強風のお蔭で、その枝から半分ほどは既に花弁を奪われていた。
辛うじて残っていた分も、更にはらはらと桜色の欠片が零れ落ちてくる。
「凄い風…」
幾秒か宙を舞い終えた桜の花が地上に降りる頃。
泉夏はようやく静かに双眸を開いた。
見事に乱れた長い髪を掻き上げれば、花びらが散る。
「…!!」
驚愕に、大きな彼女の瞳が、震えた。
自らの胸の鼓動が、耳元近くで聞こえる。
-そのひとは。
そのひとは、泉夏のすぐ目の前に、彼女と同じく片膝を地につけていた。
すらりと伸びた、長い脚、長い腕-それから、少しだけ角ばった、指。
身に纏った白衣の肩に、薄桃色の花びら。
俯いていた面を、そのひとが上げる。
深い知性を秘めた漆黒の両眼が、泉夏を捉えた。
しかし昨夜の強風のお蔭で、その枝から半分ほどは既に花弁を奪われていた。
辛うじて残っていた分も、更にはらはらと桜色の欠片が零れ落ちてくる。
「凄い風…」
幾秒か宙を舞い終えた桜の花が地上に降りる頃。
泉夏はようやく静かに双眸を開いた。
見事に乱れた長い髪を掻き上げれば、花びらが散る。
「…!!」
驚愕に、大きな彼女の瞳が、震えた。
自らの胸の鼓動が、耳元近くで聞こえる。
-そのひとは。
そのひとは、泉夏のすぐ目の前に、彼女と同じく片膝を地につけていた。
すらりと伸びた、長い脚、長い腕-それから、少しだけ角ばった、指。
身に纏った白衣の肩に、薄桃色の花びら。
俯いていた面を、そのひとが上げる。
深い知性を秘めた漆黒の両眼が、泉夏を捉えた。

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