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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
まさかこんな事をされるとは予想していなかった泉夏は、いとも簡単に、彼の腕の中に易々と収まった。
公園のベンチで、座ったままとはまた全然違う。
互いの全身がより密着し。
温もりを感じ。
息遣いを感じ。
匂いを感じ。
心臓はもう、口から飛び出しそうだった。
こんなにも波打つ胸の音は、きっと彼にも知れてるに違いなかった。
双眸を閉じ、どうにか気持ちを落ち着かせようとする。
解る問題を、わざわざ毎週質問しに行っていた頃。
不自然ではないぎりぎりまで顔を寄せ、あなたを感じようとしてた。
その時に感じていたもの全てが今、自分を包み込んでいる。
そう思うと、やはりとても平常心ではいられない。
甘い吐息が、無意識のうちに溢れてしまう。
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