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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「だから私、もういいかなって。もうやめようかなって。ずっと一緒にいてくれた龍に…少しずつ心を開き始めてた。最初はちょっと強引に、押し切られる感じだったけれど」
-段々、好きになり始めてた。
泉夏の唇が、その事実を彼に告げた。
今日あなたに見詰められなければ。
今日あなたの声を聞かなければ。
今日あなたに初めて抱き締められなければ。
今日あなたが私を好きだと言わなければ。
「今日先生に逢いさえしなければ、私は龍を好きになっていた。私は、ここにはいなかった」
彼を見据えて、はっきりと言い切る。
秀王は息を呑んだ。
「先生だって言ったよね。自分よりもいいひとがいるって。それって、龍の事だった?龍に限らず先生がいない間、私を好きだと言ってくれる人ぐらい他にもいたんだから。先生が私なんて余裕だって思っているうちに、どうなってしまうか分からないんだから。先生の言うように、他の誰かを選ぶかもしれないんだから。いつまでも私が待ってると思ってたら-」
-大間違い。
言い捨ててやろうとし。
近付いた彼に、いきなり右腕を取られた。
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