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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
自分がどんなにふしだらな顔をしているかだなんて。
そんな事、今はどうだっていい。
ただ、相手が欲しかった。
ずっと希求し続けた相手が、ようやくすぐ側に。
欲しがらずにはいられなかった。
瞳をきつく閉じ、悦びを懸命に堪える泉夏のその姿は、彼を一層刺激する。
彼女の口の端に光る唾液の糸を、秀王は舌先でそっと掬った。
微かに自分の唇からずれた彼の口唇に、泉夏は一瞬怯えてしまう。
身体を硬くしていれば、それは唇の端から細い顎先まで移動した。
思わず息を呑んで表情を強張らせた泉夏に、彼の動きは止まった。
そこに暫し唇を留めたまま逡巡し、やがて秀王は彼女の顎から離れた。
安堵の吐息を零した泉夏を、彼は抱き直した。
「…ごめん」
危うくどうかしかけた自分が、とてもつもなく恥ずかしくなる。
こんな事-こんな欲はさほど持っていないと、ずっと信じてきたけれど。
それは大きな思い違いだったと、たった今気付かされた。
彼女を前にすればいとも簡単に、どうとでもし兼ねない自分が確かに存在してる-。
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