この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「…一代目のシロ?」
恐る恐る問いかけたのだが、秀王は嬉しそうに泉夏を見た。
「そう。白いから、シロ。子供が付ける名前なんて単純だろ」
どんな話が始まるのか-緊張していた泉夏だったが、つられて笑いが漏れる。
「目的地で満開の桜の花を見て、多分その辺の観光地なんかも回ったりして、すっかり遅くなってしまったその帰り道-」
ほんの僅か狭められる、その瞳。
「暗闇の中からいきなり飛び出してきた…恐らく野良犬か何かを避けようとして、父親が思いきりハンドルを切った」
泉夏の顔が一瞬にして強張る。
「道路脇にあった大きな桜の木にぶつかって程なく車は停まり、幸運にも対向車にも後方車にも被害が及ぶ事もなかった。…死んだのは両親と、飼い犬と。同乗していたその子供が重体だっただけで」
見る見るうちに表情を凍らせてゆく泉夏を、秀王は優しく窺う。
「ただの昔話だ。なんでもない。そんな顔をさせたくて喋ってるんじゃない」
だから、普通にしていて-そうは言われるが、泉夏はどうしていればいいのかまるで分からなかった。
恐る恐る問いかけたのだが、秀王は嬉しそうに泉夏を見た。
「そう。白いから、シロ。子供が付ける名前なんて単純だろ」
どんな話が始まるのか-緊張していた泉夏だったが、つられて笑いが漏れる。
「目的地で満開の桜の花を見て、多分その辺の観光地なんかも回ったりして、すっかり遅くなってしまったその帰り道-」
ほんの僅か狭められる、その瞳。
「暗闇の中からいきなり飛び出してきた…恐らく野良犬か何かを避けようとして、父親が思いきりハンドルを切った」
泉夏の顔が一瞬にして強張る。
「道路脇にあった大きな桜の木にぶつかって程なく車は停まり、幸運にも対向車にも後方車にも被害が及ぶ事もなかった。…死んだのは両親と、飼い犬と。同乗していたその子供が重体だっただけで」
見る見るうちに表情を凍らせてゆく泉夏を、秀王は優しく窺う。
「ただの昔話だ。なんでもない。そんな顔をさせたくて喋ってるんじゃない」
だから、普通にしていて-そうは言われるが、泉夏はどうしていればいいのかまるで分からなかった。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


