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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「桜の大木に当たった瞬間、その衝撃で満開の薄桃色の花びらが、まるで雨のようにフロントガラスに降り注いだ。外に投げ出された白かった飼い犬は鮮血で染まり、赤い花弁がそこらじゅうに散ばって-」
本人さえ知らないうちに、繋いだ右手が僅かに力んでいた。
秀王は我に返り、彼女に心配などさせぬよう、すぐに力を緩めた。
「気付いたら、病院のベッドの上だった。両親も飼い犬も即死で、自分も何日も昏睡状態だったと後から聞かされた」
「…」
「幸い、自分はそれから徐々に回復していくのだけれど。どうやらその事故のショックで、それまでの記憶をすっかりなくしていたらしく。覚えているのは事故の瞬間の桃色の雨と、真っ赤な犬の姿と、赤い花びらの断片的な記憶だけ…後は両親の事も、シロの事も、何も思い出せないまま-」
-気付けば、こんな年にまでなってしまっていた。
泉夏を見、秀王は静かに微笑んだ。
本人さえ知らないうちに、繋いだ右手が僅かに力んでいた。
秀王は我に返り、彼女に心配などさせぬよう、すぐに力を緩めた。
「気付いたら、病院のベッドの上だった。両親も飼い犬も即死で、自分も何日も昏睡状態だったと後から聞かされた」
「…」
「幸い、自分はそれから徐々に回復していくのだけれど。どうやらその事故のショックで、それまでの記憶をすっかりなくしていたらしく。覚えているのは事故の瞬間の桃色の雨と、真っ赤な犬の姿と、赤い花びらの断片的な記憶だけ…後は両親の事も、シロの事も、何も思い出せないまま-」
-気付けば、こんな年にまでなってしまっていた。
泉夏を見、秀王は静かに微笑んだ。

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