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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
口を噤んだままの泉夏に秀王は苦笑いし、次を語る。
「必要以上に誰とも深入りしないようにしてきた。その人を失う時が怖かった。あんな思いをまたするくらいなら、誰も愛さない方がましだとさえ思って生きてきた」
「…」
「だから泉夏を好きだっていう気持ちも、随分気付くのが遅くなってしまった。本気で誰かを好きになる事なんて、今まで無縁の人生を送ってきたから。まさか今頃、まさかこの自分が、誰かに恋するなんて。今まで感じた事のない胸の奥の感情が、これが恋だなんて。はっきりそれを自覚したのは、アメリカに行った後だった」
歩行者信号が赤になり、ふたりは歩みを止めた。
泉夏は手を繋いだまま、空いている左手で、彼の腕にしがみつく。
秀王は、彼女の顔に自らのそれを寄せた。
「もう少し早くに分かっていれば、きっと泉夏を沢山泣かせずに済んだ」
本当に、ごめん-囁く声に、泉夏は首を振る。
「これからはもう泣かない。だって先生が一緒だから」
-そうでしょう、先生?
同意を求める泉夏に、秀王は笑い、そして確かに頷いた。
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