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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「…桜の花を見ると、どうしても思い出してしまって」
信号が青に切り替わり再び歩き出しながら、泉夏は呟く彼を静かに見上げた。
「事故以来、春が苦手で。至る所に咲き誇る桜の花がだめで。記憶なんて残っていないのに、それでもじっと見ていると、何かこう…心がざわめく感じがして。無意識に身体全体が拒絶しているって言うか」
「…」
「桜を見ずに済む場所へ行ったら、楽になれるかもって。別にアメリカじゃなくても、どこでも良かったんだけど。アメリカにも桜はあるけど、日本程密集してないから。日本を離れ、海外の大学を受験して、何れそのまま住み続けるのも悪くないなって、学生の頃からぼんやり考えてもいた。…そんな高校三年の、雨の夜-」
-公園で弱りきった白い犬を拾ってしまった。
秀王は苦笑した。
「生き物は、金輪際ごめんだと思っていたのに。…でもやっぱり、見捨てておけなかった。結局そのまま日本で大学を受験して、卒業して、就職した」
そこで、大通りに出た。
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