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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「あの大学、門を潜ると桜並木が結構続いてるだろ」
突然の会話の変化に、泉夏の気恥ずかしさは一時中断される。
「就職する時、正直延々続く桜の木を見てかなり逡巡した。でも仕事だし、我儘を言ってもいられない。そもそも最初からずっといるつもりもなかった。数年したら辞めて、アメリカに今度こそ行くんだと思っていたから。だから我慢だと。数年春を乗り切れさえすればいいと。…そう思って、働くことに決めた」
泉夏は無言で聞いていたが-内心、心境は複雑だった。
過去の事故で苦手になってしまったのはよく分かる。
けど。
でも。
春は。
桜は。
ふたりに関係する季節で-花で。
少なくとも自分にとっては、とても思い出深いもので。
彼もきっとそう思ってくれているに違いない-決め付けていただけに、勝手に落ち込んでしまう自分がいた。
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