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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
元より、春は好きだった。
そして彼と出逢ってからは一番好きな季節、一番好きな花に変わっていった。
両想いとなり、てっきりその想いも共有出来るものだと思っていた。
仕方がない。
尤もだと思う。
頭ではちゃんと分かっているのに、がっかりしている自分。
凄く、嫌になってしまう-。
そんな泉夏の耳に、懐かしむような声が届く。
「大学で准教授となり、教鞭をとるようになり。そして三年前のあの日、花びら舞い散る桜並木の下、泉夏と出逢った-」
泉夏は俯いたままの面を上げた。
「あの事故現場の散乱した荷物の中から見付かった、桜を模ったキーホルダー。恐らくその日にどこかで購入しただろう、紙袋に入ったまま見付かったそれ。病院のベッドの上で、両親の最後の形見だと渡されて以来、ずっと身に着けていた。…なのにうっかり落としてしまって、必死に探していた。その時、泉夏と出逢った-」
まるで初めて彼に出逢った瞬間のように。
彼の双眸に初めて捕らわれた瞬間のように。
泉夏の胸は高鳴ってゆく。
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