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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
「拾った犬を育ててなければ、日本にはもういなかったかもしれない。当然、あの大学にだって勤めてはなかった。二匹目の犬を飼い始めなければならなくなった時、正直ついてない、いつまでいればいいのかと嘆いたりもしたけれど。今にして思えば瀕死の犬を拾ったのも、それによって日本を発つのが十年以上も遅れたのも、みんなちゃんと理由があった。…三年前のあの日、泉夏に逢う為だった。泉夏に出逢えるように急ぎ過ぎてる俺を、繋ぎ止めてもらっていた-」
神様に-言って、秀王は泉夏に笑った。
「桜舞う春も、泉夏と初めて逢った季節だと思えば悪くない。いい思い出なんか全然なかったのに、そう思えてくるから不思議だ」
こんなに愛しいひとを、自分に与えてくれた。
あの日。
あの時。
出逢わせてくれた。
早過ぎても、遅過ぎても、いけなかった。
三年前の、あの時でなければ-。
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