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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
『…その。お化粧を落としたりとか、最低限の肌のお手入れをしたいかなとか?』
『うん』
『…それから、その』
『うん?』
『その…もしも可能ならだけど、シャワーを…貸してくれないかなって?ホテルにも最低限の用意はされてるだろうけど…いつも使い慣れてるものがいいかな、とか?』
言った側から、猛烈な羞恥が襲う。
言い出すのに相当な勇気が必要だっただけに、真面に彼を見る事すら敵わない。
変な意味合いなど一切なく-純粋に毎日の日課としてだった。
肌の手入れ以上に、今夜くらいは我慢する考えが一瞬脳裏を掠めたが-例え何をするわけでなくても、彼と初めて過ごす夜なのだ。
やはり最低限の身だしなみとして、身体くらいは綺麗にしておきたかった。
きっとまた抱き締めてくれる-そう思えば尚更、一日の汚れくらいは落としたかった。
何かを期待しているとか思われたら最高に恥ずかしい-赤い顔で俯いていれば、繋いでいた手にちょっとだけ力が入った。
どきどきしながら彼を見れば-優しく、頷かれた。
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