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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
浴室から聞こえる水音に胸を高鳴らせつつ、努めて平静を装って待っていれば-程なく彼は戻って来た。
漂う石鹸の香り。
まだ濡れたままの、少し乱れた髪。
いつだって綺麗な顔は-今まで感じた事のない色気に縁どられていた。
いつもとはまるで違う彼の様子に、鼓動がどんどん速まってゆく。
彼から目が離せずにいれば、隣りに腰を下ろしてきた。
黙って見つめれば-そっと口付けられる。
なんてことない普通のキスなのに、さっきより何倍も脳が、身体が、激しく興奮した。
思わず声が漏れそうになるくらいの快感が、背中を駆け上る。
唇を離されてからも暫くぼうっとしていれば、優しく微笑まれた。
「シャワー、浴びて来たら?」
囁かれ。
泉夏はようやく我に返った。
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