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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「い…行って来ますっ」
今、化粧を落としてしまうのはどうだろうと思ったが。
良くも悪くもすっぴんもそう変わらない自分の顔の事だ、大して問題ない-先程コンビニで買ったメイク落としやらシャンプーやらを手にして、急いで浴室に向かった。
ドアを閉めたところで、一気に力が抜けた。
シャワーを借りるだけでこんなにも緊張して-これから後はどうなってしまうのだろう。
まるで皆目見当がつかなかった。
つかなったが-いつまでも、このままではいられず。
とりあえず猛スピードでシャワーを浴び、元通りに服装を整えて、浴室のドアを静かに開けた。
部屋に足を踏み入れれば、先程と同じようにベッドに腰を下ろす彼がいた。
カバーのかかった何かの本を読んでいたらしく、こちらに気付き面を上げた。
とても嬉しそうに目を細められ-泉夏はそろそろと彼の近くまで寄った。
導かれるまま彼の隣りに座れば-抱き締められる。
このどきどきは、きっと彼に聞こえてしまってる-そう思う程に胸は波打つ。
とても恥ずかしかった-でも、とてもなく心地良くなってゆく。
いつまでもこうしていて欲しいくらいに。
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