この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「…髪」
この世で一番大好きなひとの匂いに包まれていれば、微かな声で呟かれた。
「風邪ひくと大変だから、乾かさないと」
幾分タオルで水気を拭き取り、高い位置でまとめていたのだが-その頭をそっと撫でられ、諭すように言われた。
見れば、彼の髪はもう濡れてはおらず-自分を待っている間に、既に乾かしていたようだった。
自分の返事を静かに待つ彼の双眸に惹き込まれ、泉夏は即座に従った。
「…はい」
素直な泉夏に秀王は笑って頷き、彼女を抱く腕を離した。
その微笑に泉夏は気恥ずかしさを覚え、慌てて部屋の隅に置かれた鏡の前に腰かける。
備え付けられたドライヤーを手にしたところで、こちらの様子を窺っているらしい彼の視線を感じ、動きが止まる。
じっと見られてると、正直乾かしにくい-でもそれを言い出せずにいると、やがて何かの音が微かにした。
ほんの僅かそちらを見遣れば、読みかけの本に再び目を落とす彼が確認出来た。
そんな自分の心を察してくれたのだろう-泉夏は安堵し、いつもより短時間で濡れた髪にドライヤーを当てた。
この世で一番大好きなひとの匂いに包まれていれば、微かな声で呟かれた。
「風邪ひくと大変だから、乾かさないと」
幾分タオルで水気を拭き取り、高い位置でまとめていたのだが-その頭をそっと撫でられ、諭すように言われた。
見れば、彼の髪はもう濡れてはおらず-自分を待っている間に、既に乾かしていたようだった。
自分の返事を静かに待つ彼の双眸に惹き込まれ、泉夏は即座に従った。
「…はい」
素直な泉夏に秀王は笑って頷き、彼女を抱く腕を離した。
その微笑に泉夏は気恥ずかしさを覚え、慌てて部屋の隅に置かれた鏡の前に腰かける。
備え付けられたドライヤーを手にしたところで、こちらの様子を窺っているらしい彼の視線を感じ、動きが止まる。
じっと見られてると、正直乾かしにくい-でもそれを言い出せずにいると、やがて何かの音が微かにした。
ほんの僅かそちらを見遣れば、読みかけの本に再び目を落とす彼が確認出来た。
そんな自分の心を察してくれたのだろう-泉夏は安堵し、いつもより短時間で濡れた髪にドライヤーを当てた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


