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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「…一緒に?」
泉夏の問いに秀王は一瞬考え込み、次いで薄く笑った。
「まあ…この部屋にベッドはひとつしかないし-」
-泉夏がそれでいいと、言ってくれたんじゃなかったっけ?
切り替えされ。
瞬間的に、泉夏の頬は燃えるように赤くなる。
予約している宿泊者以外が泊まる事はやはり良くないと、きちんと彼がフロントに申し出てくれた。
ふたりでシングルの部屋には宿泊出来ず、部屋を移動しなくてはならなかった。
どこの部屋がいいかと訊かれたが-そんな事を問われても、恥ずかしくて答えられなかった。
『つまり…その、ベッドがひとつかふたつかの違いだと思うんだけど』
-泉夏はどっちがいいかなって。
視線を外して質問を投げかけられた。
その二種類の選択肢しかないのは当たり前なのだが-泉夏はどんどん窮地に追い込まれていった。
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