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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「違う。そうじゃないの-」
-そんな事、あるわけがない。
嫌なら、こんな夜更けまでここにいない。
麻衣のアパートに泊まらせてもらうから-心配性の兄に嘘を吐いてまで、絶対ここにいない。
「もしかして…警戒されてる?」
誤解を解かなきゃ-表情を硬くしていたのを、更に勘違いされたようだった。
「もしもそうなら、泉夏の嫌がる事は誓って何もしない」
「…」
「ただ朝まで側にいて欲しい」
-それだけだ。
切々と訴える彼と目が合った。
ベッドサイドの時計を見ると、時刻は十二時を回っていた。
もう明日じゃない。
今日だ。
今日また、暫くさよならをしなくてはならない。
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