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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
それなのに、どんな間違いが起きてしまったのだろう。
それなのに、どんな奇跡が起こってくれたのだろう。
罵りを覚悟で伝えた想いは確かに彼女に届き。
あまつさえ、自分の気持ちは彼女に受け入れられた。
あの熱い夏の日に、とっくに自分への想いなど捨てたに違いない-そう、信じて疑わなかったのに。
見つめ合い。
名を呼び合い。
指先が触れ合うどころか、その柔らかな身体を抱き締める事を許され。
その唇に、口付けた。
極めつけは、一緒の夜を。
ふたりだけの一夜(いちや)を。
こんな展開は、全くの予想外だった。
自分の願望が見せる、この上ない幸せ。
この上なく残酷な夢-夢か現か、冷静になってよく考えてみた。
それこそ何度も何度も。
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