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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「泉夏の寝顔だ」
囁かれ。
泉夏の頬が染まった。
「やだっ、そんなの見ないでっ」
大声で、泉夏は抗議する。
「そういうのは断りなく勝手に見ちゃだめなのっ」
真っ先に寝落ちしたくせによく言う-自分でも思ったけど。
第一、積極的に見ようとしなくとも、この至近距離では『見れてしまう』-頭の片隅では分かってる。
でも寝顔だなんて、普通は誰彼構わず見せるものじゃないし。
眠っている間の完全無謀な姿だなんて-可愛くないどころか、である。
見てたとして-そこはせめて黙っていて欲しかった。
わざわざ口にしなくても-泉夏が拗ねていれば、そんな彼女をより逆撫でするような事を秀王は言ってくる。
「だめって、どうして?」
意地悪なんかじゃない、多分本気の彼の疑問に、泉夏の声は高さを増す。
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