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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「可愛くないからに決まってるじゃないのー!」
もしやと思ってたけど、泉夏は確信する。
頭はもの凄くいいくせに、こういう事に関してはちょっと疎い-ってか、はっきり言って鈍い。
悪気はないのだろうけど-でも悪気がないからと言って、やっぱりあんまり見られたくはない。
いや、見られてもしょうがないけど-その事実は自分の心の中だけにしまっておいて欲しい。
そんな乙女心を分かってくれるだろうか?
泉夏が真摯に返事を待っていれば-彼女の想像したどれとも違う言葉を、彼は放った。
「可愛かったよ」
「えっ」
「凄く可愛いって思って、泉夏を見てた」
翳りのない笑顔を向けられ、泉夏は何も言えなくなる。
「眠ってしまってるとは言え、あまりじっと見続けるのは悪いかなとは思ってたんだけど。でも一度見てしまったら…もう目が離せなくなってしまった」
-あんまり可愛くて。
間近で言い切られ、泉夏の頬は燃える。
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