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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
これ以上『可愛い』だなんて褒められたら堪らないから、あえて『可愛くなく』告げたのに。
それで終わりにして欲しかったのに。
これではまるきり逆効果だった。
「…はい」
長い沈黙を経て、泉夏は小さく頷いた。
自分が『可愛い』のだと自分自身で遂に認めたかのようで、もう顔は真っ赤だった。
そうじゃない。
断じて、そんなんじゃない。
でもそうでもしないと、彼の双眸は絶対に自分を逃してくれない-。
羞恥に悶える泉夏を、秀王は抱き寄せた。
「今夜は特別だ。泉夏がこうして側にいて。泉夏をこうして抱き締めて。泉夏の寝顔を眺めて-」
-今夜は俺だけが可愛い泉夏を独り占めしてる。
確かに飾った言葉は難しいのかもしれない。
でもその分、思ったままをストレートに口にされる。
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